経営者に相談相手がいないのは普通です|一人で整理する4手順

日曜の夜。来週の予定を確かめて、そのままノートを開く。書き出してはみたけれど、閉じるときには朝と同じ結論に戻っている。誰かに聞いてみたい。ただ、思い浮かぶ顔がない。
従業員には言えません。数字の不安を経営者が漏らせば、そのまま伝わります。家族には心配をかけたくない。同業の集まりでは、話せるところまでしか話さない。相談相手がいないのは、あなたが閉じているからではなく、その立場に置かれると誰でもそうなるからです。
「相談相手の選び方」を調べる前に、相談したい中身がまだ形になっていないことのほうが多いです。この記事は、その形をつくるところだけを書きます。
相手がいないのではなく、渡せる形になっていない


相談相手を探しても決まらないとき、原因は相手側ではなく、渡すものが整っていないことにあります。
「なんとなく不安」は、人に渡せない
頭の中にあるのは、たいてい1つの悩みではありません。採用をどうするか、来期の売上、設備の入れ替え、自分の働き方。これらが混ざったまま「このままでいいのか」という1つの塊になっています。
塊のまま人に渡すと、返ってくるのも塊です。「まあ、大丈夫じゃないですか」「そういう時期ですよ」。悪気はなく、渡されたものが塊だからそうなります。
だから、相手を増やしても決まらない
顧問税理士、商工会議所、同業の先輩。人数を増やしても、渡すものが同じなら返ってくるものも同じです。先に分けておくと、同じ相手から違う答えが返ってきます。
相手選びの前に、5分でできることがあります。それだけで、相談したほうがいいのかどうかも見えてきます。


一人で整理する、4つの手順


紙とペンだけで足ります。順番どおりにやってください。
- 頭にあることを、20分かけて全部書き出す
きれいに書こうとしないでください。単語で構いません。書き切ると、だいたい15〜25個になります。 - それぞれに「自分で決められるか」を〇×で付ける
相手や外の事情で決まるものには×を付けます。×が半分を超えても普通です。 - 〇が付いたものだけを、期限の近い順に並べ替える
重要度ではなく期限で並べます。重要度は決められないから悩んでいるためです。 - いちばん上の1つに、「次にやる具体的な動作」を1行書く
「考える」「検討する」は動作ではありません。「〇〇さんに電話して日程を聞く」まで下ろします。
ここまでで、手をつける1つと、その次の動作が決まります。残りは消えていませんが、いま持たなくていいものとして脇に置けます。
×が付いたものは、捨てずに別の紙へ
自分で決められないものを同じ紙に残しておくと、手が動かないまま視界に入り続けます。別の紙に移して、「動きがあったら見る」と書いておいてください。
この×の紙こそ、人に相談するときに渡すものです。「決められないもの」だけを並べて持っていくと、話が具体的になります。
たとえば「採用をどうするか」は、分けると「いま出せる給与の上限」「募集を出す媒体」「面接に使える時間」「その人に任せたい仕事の範囲」に割れます。上限と時間は自分で決められるので〇、応募が来るかどうかは相手次第なので×です。こうして分けると、相談したいのは「任せたい仕事の範囲」の一点だけだったと分かることがよくあります。
それでも同じところを回るとき
4つやっても、来週また同じ紙を書いていることがあります。そのときは整理の問題ではなく、前提のほうが決まっていない合図です。
事業をどこまで大きくしたいのか。自分はどのくらい働きたいのか。ここが決まっていないと、個別の判断は何度でもひっくり返ります。一人で考えると同じところを回りやすいのは、この層です。
見分け方は簡単で、3回書いて3回とも同じ順番になるなら整理の問題ではありません。並べ替えても結論が動かないのに手がつかないなら、その下に「やりたくない」か「怖い」が隠れています。そこは紙では出てきにくいので、口に出す場を別に用意したほうが早いです。


人に頼むと決めたときの、選び分け


整理した結果、やはり相手が要ると思ったら、何を求めているかで相手が変わります。3つに分かれます。
- 答えがほしい
税務、労務、法務のように正解のある領域です。その分野の専門家に聞くのが早いです。 - やり方を決めてほしい
進め方の設計を任せたいなら、その業界を知っているコンサルタントが向いています。 - 自分の考えを、言葉にしたい
答えは自分の中にあるがまとまらない、という状態です。ここは問いを投げてもらう形が合います。
混ざったまま頼むと、期待と中身がずれます。答えがほしいのに問いを返されると物足りませんし、考えを整理したいのに正解を渡されると、腑に落ちないまま進むことになります。
費用をかけずに聞ける、公的な相談窓口
×の紙を前にして、いきなりお金を払って相手を探すのは気が重いと思います。国や地域の団体が用意している窓口なら、無料で話を聞いてもらえます。紙に残ったものの種類で、行き先を選んでください。
- よろず支援拠点
国が47都道府県に置いている経営相談所で、中小企業基盤整備機構が運営しています。売上の伸ばし方から商品づくり、後継ぎのことまで、分野を問わず何度でも無料で相談できます。予約制です。どこへ持っていけばいいか分からないものが並んでいるときの、最初の行き先になります。 - 商工会議所・商工会
商工会議所では、その地域で事業をしていれば会員でなくても、経営指導員に原則無料で相談できます。税金や法律の話は、必要に応じて税理士や弁護士などにつないでもらえます。地元の事情を分かっている人と話したいときに向いています。地域によっては商工会が窓口です。 - 日本政策金融公庫の事業資金相談ダイヤル
借入れや融資の制度について、無料の電話で相談できます。紙に「設備を入れ替える資金」のようなお金の話が残っているなら、使える制度を先に聞いておくと、次の判断が具体的になります。
どの窓口も、持っていく中身が分かれているほど話が早く進みます。上の4つの手順でつくった×の紙を、そのまま見せてください。
外に頼むときに、確かめておきたいこと
経営の相談は、成果を外から確かめにくい買い物です。そのぶん、相手選びで迷いやすくなります。確かめ方の考え方はSNSコンサルが怪しいと言われる理由に書きました。分野は違いますが、見るところは同じです。
相談は、弱さの表明ではありません。一人で決め続けられる人ほど、決め方が固まっていきます。外から問いが入ると、その固まりがほどけます。
よく聞かれる3つのこと


顧問税理士に相談するのでは足りませんか
数字の判断は、そのまま伺うのがいちばん早いです。足りなくなるのは、正解が1つに決まらない話のときです。事業をどこまで広げるか、誰を採るか、自分が何を手放すか。こうした問いに専門家が答えを出すのは、そもそも役割の外にあります。
同業の集まりでは、なぜ話しきれないのでしょうか
その場にいる全員が、どこかで競合か取引先になり得るからです。弱みを出した記憶は残ります。だから話せるところまでで止まる。これは付き合い方の問題ではなく構造の問題なので、気心の知れた相手を増やしても解けません。
社員に打ち明けてもよいものでしょうか
打ち明けること自体は悪くありませんが、迷っている最中の話を渡すと、社員は判断できず不安だけが残ります。上の4つの手順で「次にやる動作」まで下ろしてから、決まったこととして伝えるほうが、結果として早く進みます。
決まったことを人に伝えるときの資料の作り方は、文字が多いスライドを見やすくするにまとめています。
3つとも、相手が悪いのではありません。渡す中身と、渡す相手が合っていないだけです。


当社がやっていること
株式会社GORAQUEでは、経営者向けコーチングをご用意しています。正解をお渡しするのではなく、対話で言葉にして、次の一歩まで落とし込む形です。
1回50分。月2回のペースで、事業のことと、ご自身の働き方の両方を扱います。上の4つの手順を、一人ではなく二人でやるものだと思っていただければ近いです。体験セッションは5,000円(税込)でお受けしています。
合う合わないがはっきり出る種類のものなので、体験だけ受けて終わっていただいて構いません。
まとめ
経営者に相談相手がいないのは、めずらしいことではありません。従業員にも家族にも同業にも言えない話が残るのは、立場の側の事情です。
相手を探す前に、紙に全部出す、自分で決められるかを分ける、期限で並べる、次の動作を1行書く。この4つで、今週手をつける1つが決まります。そのうえで残った「決められないもの」を持っていけば、相談は短く、具体的になります。
頭の中を、50分で整理してみませんか
何から話せばよいか決まっていない状態で構いません。お話を伺いながら、いま抱えているものを分けて、今週手をつける1つと、その次の動作まで一緒に決めます。無理な営業はいたしません。
1回50分・オンライン。体験は5,000円(税込)です。
