決断できない経営者へ|止まっている1件を、足りないもので分ける

決断できない経営者へ。足りないものを見分け、決める日を先に置く

日曜の夜、自宅のソファでスマホを開いて「決断できない 経営者」と打ち込んでいる。社員5人の会社で、主力の仕事の単価を来年の春から上げるかどうかを、もう3か月決められずにいます。仕入れの値段も外注先への支払いも上がっているのに、15年付き合ってきた取引先の担当者の顔が浮かぶと、見積書の数字を書き換える手が止まり、月曜になればまた目の前の仕事に戻ってしまいます。

決断できない経営者が止まっている1件には、決めるための材料、何を優先するかという物差し、うまくいかなかったときの引き返し方の、どれかが足りていないことがあります。この記事では、保留にしている1件に何が足りないのかを見分け、それぞれ来週やることを1つ決めて、決める日と見直す日を先にカレンダーに置くところまでを、値上げの例で順に書きます。読み終えるころには、その1件について来週やることと決める日を、紙1枚に書けるはずです。

この記事は、一人で判断を抱えている経営者の方と、1回50分のオンラインのコーチングで一緒に考えを整理している会社が書いています。

決められない自分を責める前に、止まっている1件を紙に1行で書いてみてください。書いた1行を眺めていると、何が足りなくて止まっているのかが見えてくることがあります。

目次

決断できない経営者の1件には、足りないものがある

決断できない経営者の1件には、足りないものがある

決断できない理由を調べると、判断の基準や情報が足りないこと、失敗するのが怖いことがよく挙げられていて、どれも思い当たるところがあるはずです。ただ、原因を知っただけでは目の前の1件はまだ動かないので、ここでは保留にしている1件だけを取り出して、その1件に何が足りないのかを、次の3つのどれに当たるかで見ていきます。

材料が足りない

決めるのに使う数字や事実が、まだ手元にそろっていない状態です。値上げの例なら、いまの単価で1件あたりいくら残っているのか、同じ仕事を同業者がいくらで受けているのか、取引先が来年どれくらいの予算を組みそうか、といったことが分からないまま考えていると、頭の中で同じ心配が何度も回ります。このとき必要なのは、何を調べれば決められるのかを1行で書くことです。

物差しが決まっていない

材料はそろっているのに決められないときは、何を優先するのかという物差しが決まっていないことがあります。売上を守りたい、長年の取引先との関係を守りたい、社員の残業を減らしたい、という気持ちはどれも本当で、それぞれが別の答えを指しているので、比べるたびに結論が入れ替わってしまいます。

引き返し方が見えていない

材料も物差しもそろっているのに手が止まるときは、うまくいかなかったときにどうなるのかが見えているかを確かめてみます。値上げを切り出して取引先に断られたら、その先の売上がどうなるのか、元の単価に戻すことはできるのかが分からないまま決めるのは、出口の分からない道に入るのに近く、怖さが先に立つのは自然なことです。

自分の1件がどれに当たるかは、上から順に確かめると見分けやすくなります。まず「これが分かれば決められる」という数字や事実を書き出し、その中にまだ確かめていないものがあれば、材料が足りていません。必要な材料はそろっているのに、比べるたびに案が入れ替わるなら物差しが足りておらず、物差しも決まっているのに怖さで手が止まるなら、引き返し方が見えていないと考えます。

止まっている1件に足りないものの3つ。材料は数字や事実が手元にない、物差しは何を優先するかが決まっていない、引き返し方はうまくいかないときの出口が見えない
図1:止まっている1件に、どれが足りないか

3つのうち1つに決めきれなくても大丈夫です。いちばん引っかかっているものから手をつけると、残りの2つが途中で見えてくることもあります。

足りないものごとに、来週やることを1つ決める

足りないものごとに、来週やることを1つ決める

足りないものが分かったら、それを埋めるために来週やることを1つだけ決めます。やることを3つも4つも並べると、どれから始めるかでまた迷うので、足りないものの種類ごとに、手が動く大きさの1つを選びます。

材料なら、調べることを1つに絞って日を決める

「これが分かれば決められる」というものを1つ選び、それを調べる日を決めます。値上げの例なら、いまの単価で1件あたりに残る額を計算する、同業の知り合いに相場を聞く、いちばん付き合いの長い取引先の担当者に来年の予算の見通しを聞く、のうちどれか1つです。全部そろうまで待つと、そろったころには次の心配が出てくるので、1つ調べ終えたら、その翌日に置いた決める日に、そろっている材料で決めると先に自分と約束しておきます。その日になっても、どうしても欠かせない情報が残っていたら、追加で確かめることを1つと次の決める日を書き足して、それより先には延ばさないようにします。

数字の見方や取引の進め方を専門家に聞きたいときは、国が設置している「よろず支援拠点」が47都道府県にあり、中小企業や小規模事業者の経営の相談に何度でも無料で応じています(よろず支援拠点全国本部)。

物差しなら、守りたいものに今回の順番をつける

守りたいものを3つ書き出し、今回の1件ではどれを1番にするかを決めます。この順番は会社がこの先ずっと守るものでなくてよく、「今回の値上げでは、社員の残業を減らすことを1番にする」と、その1件に限って決めれば十分です。1番が決まると、それを手放す案は外せるので、比べる案の数が減って結論が入れ替わりにくくなります。たとえば残業を減らすことを1番にしたなら、単価は据え置いて受ける件数を増やし、売上を補う案は、残業が増えるのでこの時点で外せます。

私も、会社員として管理職を務めながら副業に取り組み、フリーランスを経て法人を経営するまで、立場が変わるたびに何を優先するかで迷い、考えがまとまらないまま時間が過ぎた時期がありました。本当にやりたいことと、そこへの道筋を言葉にできたときに、行動が大きく変わったのを覚えています。

引き返し方なら、うまくいかなかった場面を先に書く

決めたあとで「うまくいかなかった」と分かった場面を先に想像し、その理由を書き出しておく方法があります。意思決定を研究するゲイリー・クラインが2007年にハーバード・ビジネス・レビューで紹介した「プレモーテム」というやり方で、計画が失敗に終わったと仮定して、ありそうな理由をメンバーに挙げてもらうものです(Harvard Business Review「Performing a Project Premortem」)。

一人で使うなら、「来年の秋、値上げはうまくいかなかった。なぜか」と紙の上に書き、出てきた理由ごとに、先に打てる手と、その場合に引き返す条件を書き添えます。たとえば「いちばん大きい取引先からの発注が半年で2割減ったら、その取引先とだけ単価を話し合い直す」と書いておけば、決めたあとも出口が見えています。いっぺんに全部を変えずに、新しく出す見積もりから新しい単価にしてみる、というように小さく試せる形がないかも、このときに見ておきます。

足りないものごとの来週やること。材料なら調べることを1つに絞り調べる日を決める、物差しなら守りたいものを3つ書き今回の1番を決める、引き返し方ならうまくいかなかった場面を先に書き引き返す条件を添える
図2:来週やることは、1つだけ

決める日を先に置き、決めた理由を1行で残す

決める日を先に置き、決めた理由を1行で残す

来週やることが決まったら、それをやる日と、その翌日の決める日をカレンダーに入れ、あわせて見直す日も仮に置いておきます。見直す日は、決めたことの結果が数字に出るころにします。値上げなら、新しい単価での発注が2〜3か月分たまるころが目安です。決める日が無いままだと、新しい心配が出るたびに調べることが増えて、保留の期間だけが延びていきます。

決めたら、決めた理由を1行で紙に残し、見直す日も一緒に書いておきます。値上げなら「残業を減らすことを1番にしたので、4月から単価を上げる。7月の末に、社員の残業時間と取引先ごとの発注の数で見直す」のように書きます。理由と見直す日が書いてあれば、決めたあとで迷いが戻ってきても、紙を開けば決めたときの考えに戻れますし、同じ迷いは見直す日まで置いておけます。ただし、先に書いた引き返す条件に当たったときや、取引先の事情が大きく変わったときは、見直す日を待たずにその時点で考え直します。

決めるまでの流れ。今日は1件を1行で書く、来週は足りないものを1つ埋める、決める日は理由を1行で残す、見直す日は数字で確かめる
図3:決める日と見直す日を、先に置く

一人で決めきれないときは、紙を持って人に話す

抱えているものが多すぎて1件にしぼれないときは、先に頭の中を整理する段取りが要ります。頭にあることを紙に全部書き出し、自分でコントロールできるものに〇、相手や外の事情で決まるものに×を付け、〇だけを期限の近い順に並べて、いちばん上の1つに次の動作を1行書く、という4つの手順を経営者に相談相手がいないのは普通ですに書いています。

1件にしぼれていても、3つのどれが足りないのかが自分では分からないときは、その紙を持って誰かに話すのも手です。今日決めたいことを1行の問いにして材料のメモ1枚と一緒に持ち込み、話す時間の最後の10分で次の一歩と期限を決める、という時間の使い方を経営者の壁打ちにまとめました。

見直す日が来たら、その日はほかの心配を足さずに、紙に書いた理由と、残業時間と発注の数だけを見て、続けるか戻すかを決めてみてください。

今夜、保留の1件を紙に1行で書く

今夜、保留の1件を紙に1行で書く

止まっている1件に足りないのが材料・物差し・引き返し方のどれなのかが分かれば、来週やることを1つに絞れます。調べることを1つにして日を決める、守りたいものに今回の順番をつける、うまくいかなかった場面を先に書いて引き返す条件を添える、のうち当てはまるものを選び、決める日と見直す日をカレンダーに置いてください。まずは今夜、保留にしている1件を紙のいちばん上に1行で書き、その下に足りないものがどれかを書き添えてみてください。

当社の経営者向けコーチングは、1回50分・月2回のオンラインのセッションで、質問と対話を通じて頭の中にあるものを言葉にし、優先順位を決めて、次の一歩を実際に動ける形にするところまでご一緒します。体験セッションは50分・5,000円(税込)で、続けるかどうかは体験のあとに決めていただけます。

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1回50分・オンライン。体験は5,000円(税込)です。

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この記事を書いた人

山崎 嘉久のアバター 山崎 嘉久 株式会社GORAQUE 代表取締役

株式会社GORAQUE 代表取締役。SNS運用顧問・SNS運用代行、LINE公式アカウント・UTAGE構築、デザイン制作を通じて、個人事業主と小さな会社の集客を支援しています。商工会議所や自治体の協議会で、SNS運用とデザイン制作をテーマに登壇。大阪府枚方市を拠点に活動しています。

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