経営者の優先順位|先にやめることを決め、期限のない仕事を守る

月曜の朝7時半、社員が来る前の事務所で、今週やることをスマホのメモに書き出してみたら、見積もりの返事が3件、現場の確認が2件、請求書の発行、銀行に出す書類、社員から相談されている休みの取り方まで、20行を超えていました。社員6人の看板と印刷の会社で、どれも自分が受けたほうが早いので抱えてきましたが、2か月前に「出そう」と決めた求人の原稿だけは、今週もまた手つかずのまま来週の欄に移りそうです。
経営者の優先順位を締め切りの近い順だけで決めていると、お客さまからの返事や支払いのように期限のある仕事が毎週上に来て、採用や値決めの見直しのように期限のない仕事はいつまでも下に残ります。この記事では、抱えている仕事を「やめる」「任せる」「自分でやる」の3つに分ける問いと、自分でやる仕事のうち期限のない1つを、来週の予定表に先に入れる手順を書きます。読み終えるころには、今週やめるか任せる仕事を1つと、来週自分で取り組む期限のない仕事の時間を、予定表に書けるはずです。
この記事は、一人で判断を抱えている経営者の方と、1回50分のオンラインのコーチングで一緒に考えを整理している会社が書いています。
20行のメモを前にして手が止まるのは、怠けているからではありません。全部を自分で受けてきた結果なので、まずは何を手放せるかを一緒に見ていきましょう。
経営者の優先順位を期限の順だけで決めると、残る仕事がある


やることが多すぎて頭が回らないときに、書き出した仕事を期限の近い順に並べ、いちばん上の1つから手をつけるのは、今週を乗り切るためのよいやり方です。ただ、この並べ方を何週も続けていると、見積もりの返事や請求書のように相手が待っている仕事が毎週上に来ます。その分、求人の原稿や値決めの見直し、社員一人ひとりとの面談のように、誰にも催促されない仕事は下の欄から動かなくなります。
期限のない仕事が厄介なのは、今週先送りしても目に見える困りごとが起きにくいのに、先送りを続けるうちに人手や利益に響いてくることがあるところです。たとえば、求人を出さないまま繁忙期に入れば社長の残業がさらに増え、値決めを見直さないまま材料の値段が上がれば、同じ件数をこなしても手元に残るお金は減っていきます。


P.F.ドラッカーの『経営者の条件』(上田惇生訳)の目次を見ると、第2章が時間の使い方を診断する「汝の時間を知れ」で、第5章「最も重要なことに集中せよ」には「過去を計画的に廃棄する」「劣後順位の決定が重要」という節が並んでいます(ダイヤモンド社『経営者の条件』目次)。劣後順位は、字のとおり、優先順位とは反対に後へ回すものの順位です。何から始めるかと同じくらい、何を後に回すか、何をやめるかを先に決めておくと、期限のない仕事に回す時間が残りやすくなります。
期限の順は今週を回すための並べ方として使い、それとは別に、期限のない仕事の置き場所を週に1回だけ決める。この2本立てにすると、どちらも手放さずに進めやすくなります。
やめる・任せる・自分でやるに、3つの問いで分ける


書き出した20行の1つずつに、次の3つの問いを上から順に当てていきます。最初の問いに当てはまれば「やめる」、2つ目に当てはまれば「任せる」の印を付け、どちらにも当てはまらなかったものは「自分でやる」に入れて、3つ目の問いでその中身をさらに見ていきます。20行を書き出すことさえ進まないときは、先に経営者に相談相手がいないのは普通ですの手順で頭の中を紙に出してから、この3つの問いに進んでください。頭にあることを全部書き出し、自分でコントロールできるものに〇、相手や外の事情で決まるものに×を付け、〇だけを期限の近い順に並べて、いちばん上の1つに次の動作を1行書く、という4つの手順です。
来月しなくても、誰も困らないか
来月まるごとこの仕事をしなかったとして、困るお客さまや社員の顔が具体的に浮かばず、半年後の会社にも響かないなら、やめる候補です。求人や値決めのように、今月は誰も困らなくても半年後に効いてくる仕事は、ここでは外さずに次の問いへ回します。たとえば、毎月なんとなく作っている社内向けの売上の表を誰も見ていない、半年前に始めたSNSの更新が自分の負担になっているだけで問い合わせにはつながっていない、といったものがここに入ります。いきなり全部をやめるのが不安なら、「来月1か月はやめて、その次の月の初めに困った人がいたかを確かめる」と期間を区切っておくと、手放しやすくなります。
やめる候補が1つも出なくても、続けてきたものには理由があるので、次の「任せる」の問いで軽くなることのほうが多いと思います。
7割の出来で、社員が仕上げられるか
自分がやれば10の出来になる仕事でも、社員が7割の出来まで仕上げ、最後に社長が5分見直せば外に出せるなら、任せる候補です。見積もりの下書き、請求書の作成、現場の写真の整理などは、手順をメモ1枚に書けるかどうかが目安になります。請求書なら、宛先・金額・支払いの期限のように社長が最後に見る項目を先に決めておき、社員が作った下書きをその項目だけ確かめてから送る形にすると任せやすくなります。1回目は社員の横で一緒にやって、2回目からは社員が作ったものを見るだけにすると、任せたあとの不安が小さくなります。任せた直後は、自分でやるより時間がかかることもあるので、確かめるのにかかった時間と直した点をメモに残し、手順や伝え方を見直していきます。
自分が決めないと、誰も決められないか
最後に残るのが、社長が決めない限り会社の誰も決められない仕事で、値決め、採用、大きな取引先との条件、お金の借り方などがここに入ります。「自分でやる」に入った仕事は、期限があるかどうかでもう一度分けます。期限のあるものは、期限の順に予定へ入れて片づけます。残った期限のない仕事は、期限の順の並べ方では上に来ないので、それぞれに「このまま半年置いたら何が起きるか」と「手をつけてから形になるまでにどれくらいかかるか」を1行ずつ書きます。そのうえで、置いたときの影響が大きく、形になるまで時間がかかるものを1つだけ選びます。選ばなかったものは、来月の候補として別の紙に書き写しておきます。


私も、会社員として管理職を務めながら副業に取り組み、フリーランスを経て法人を経営するまで、立場が変わるたびに何を優先すべきかで迷い、考えがまとまらないまま時間だけが過ぎた時期がありました。やりたいことと、そこへの道筋を言葉にできてから、手放すものも決めやすくなりました。
自分でやる1つを、来週の予定表に先に入れる


自分でやる1つが決まったら、その仕事をする時間を、ほかの予定より先に来週の予定表へ入れます。期限のない仕事は、空いた時間ができたらやろうと思っているうちは、見積もりや電話で空き時間が埋まってしまいます。「火曜と木曜の朝9時から90分は求人の原稿」のように曜日と時刻を決めて、お客さまとの約束と同じ扱いにしておきます。
社員が数名の会社では、社長の机に人が来るのを止めにくいので、その時間だけは急ぎ以外の相談を10時半以降に回してほしいと、朝のうちに社員へ伝えておくと守りやすくなります。週の終わりの金曜の夕方には、任せた仕事の出来を15分で確かめます。月曜の朝には先週の紙を見ながら15分で3つの問いを当て直すと、分け方が1週ごとに少しずつ整っていきます。


自分でやる1つが、判断で止まっているとき
選んだ1つが値決めや採用のような判断で、予定表に時間を入れても考えが同じところを回るなら、その1件に足りないものを見分けると先へ進みやすくなります。決めるための数字や事実がそろっていないのか、何を優先するかの物差しが決まっていないのか、うまくいかなかったときの引き返し方が見えていないのかを確かめ、足りないものごとに来週やることを1つ決める手順を、決断できない経営者へにまとめました。
予定表に入れた90分を、急な電話で1回つぶしてしまっても大丈夫です。その週のうちに別の朝へ移せれば、期限のない仕事はちゃんと前に進んでいます。
今週、手放す仕事を1つ決めてから始める


経営者の優先順位は、期限の順で今週を回しながら、やめる・任せる・自分でやるの3つの問いで仕事を分け、自分でやる仕事のうち期限のない1つに、来週の予定表で先に時間を取っておくと決めやすくなります。まずは今朝のメモの20行に「来月しなくても、誰も困らないか」を当ててやめるものを1つ選び、やめられるものが見つからなければ社員に任せられる仕事を1つ選んで、そこで空いた時間に、自分でやる期限のない1つを入れて、来週の火曜の朝9時から90分として予定表に書き込んでみてください。
当社の経営者向けコーチングは、1回50分・月2回のオンラインのセッションで、質問と対話を通じて頭の中にあるものを言葉にし、優先順位を決めて、次の一歩を実際に動ける形にするところまでご一緒します。体験セッションは50分・5,000円(税込)で、続けるかどうかは体験のあとに決めていただけます。
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