経営者の目標設定|来年の数字を1つに絞り、毎週の行動に落とす

11月の日曜の夜、夕食のあとにスマホで来年のカレンダーを眺めていると、毎年1月の仕事始めに社員の前で話している「今年もがんばろう」の一言が浮かんできます。社員5人の車の整備工場を営んで10年、去年も手帳の1ページ目に「売上を伸ばす」と書きましたが、その一行を3月より後に見返した覚えはなく、年末に振り返ろうとしても、届いたのかどうかを確かめる物差しが見当たりません。
経営者の目標設定は、来年の目標を月末に確かめられる数字1つに絞り、その数字を毎月の数字と毎週の行動に割っておくと、1年のあいだ手元で使える形になります。この記事では、数字を1つに絞る決め方、1年の数字を月と週の行動に割る手順、年明けに社員へ伝えて月に1回見直すやり方を、整備工場の例で順に書きます。読み終えるころには、来年の数字を1つと、来週から自分が受け持つ行動を1つ、紙に書けるはずです。
この記事は、一人で判断を抱えている経営者の方と、1回50分のオンラインのコーチングで考えを整理し、行動計画に落とすところまでご一緒している会社が書いています。
去年の一行を見返さなかったのは、月末に確かめようのない書き方だったからだと思います。書き方を変えて、月と週の行動まで割っておけば、同じ1ページを12月まで手元で使える紙にできます。
経営者の目標設定は、来年の数字を1つに絞るところから


中小機構(独立行政法人 中小企業基盤整備機構)が運営するJ-Net21のQ&Aは、中期経営計画の目標について、数値で表すことが困難な定性的目標と、数値で表すことが可能な定量的目標を検討し、希望や願望も入れて少し高めに設定するとよいと案内しています。同じページには、数値目標があると計画期間に達成すべき数字が出るため、とるべき行動が明確になるとも書かれています(J-Net21「中期経営計画には何を盛り込めばよいのでしょうか。」)。
社員数名の会社で1年の目標を立てるときは、この2つを、どんな会社でいたいかを書いた1行と、月末に確かめられる数字1つの組にしておくと、社長も社員も覚えておけます。整備工場の例なら、1行は「車検のたびに、また来ようと思ってもらえる工場」、数字は「車検の台数を月平均36台にする」のような形です。
数字の候補が売上、利益、台数、新しいお客さまの数といくつも浮かぶときは、月末の帳簿や会計ソフトの画面ですぐ確かめられて、社員の毎日の仕事で増やせるものを1つ選びます。売上の合計は部品の値段や大きな修理が入ったかどうかでも動くので、整備工場なら車検や点検の台数のほうが、朝礼で話したときに社員がその日の仕事と結びつけやすくなります。


少し高めの数字は、今年の月ごとの実績から決める
数字の大きさを決める前に、直近10か月ほどの実績を月ごとに書き出します。車検の台数なら、月によって何台ばらついたか、いちばん多かった月は何台だったかを見ておくと、少し高めがどのくらいかを自分の会社の数字で考えられます。今年の平均が月30台で、いちばん多かった月が35台なら、来年の月平均36台は2割増しで、平均で見ると今年いちばん多かった月を少し超える水準になります。前の年の2倍のように、いまの人数と設備で何をすれば届くのかを説明できない数字は、このあと週の行動に割るところで手が止まるので、ここで一段下げておきます。
数字は、まず1つから始めて大丈夫です。1つなら、忙しい月でも月末に見返す時間を取りやすくなります。
1年の数字を、月の数字と毎週の行動に割る


数字が決まったら、1年の数字を月の数字に割り、さらに毎週の行動に落とします。月平均36台なら、12月の帳簿を待たずに、毎月の終わりにその月に決めた台数へ届いたかを見られるようにしておきます。今年の実績で台数の多い月と少ない月がはっきり分かれているなら、36台を一律に当てるより、その波に合わせて月ごとの台数を決め、12か月を足すと432台(月平均36台)になるようにしておくほうが、届かない月が続いて気持ちが折れるのを防げます。
月の数字は結果なので、それだけを毎朝眺めていても台数は増えません。そこで、台数が増えるまでにお客さまの側で起きていることを順にさかのぼり、自分たちが毎週できる行動を探します。車検の台数なら、車検の時期が近いお客さまに案内が届き、予約の電話をもらい、当日に車を預かる、という順になります。この順番のうち、こちらから手を打てるのは案内を出すところと、案内が届いたあとに声をかけるところです。今年、案内を出したお客さまのうち何人が予約したかを数えておくと、月に6台増やすには案内や電話を月に何件増やせばよいかを仮に置けるので、その件数を4で割って週の件数にします。
行動を書くときは、J-Net21の同じページにある5W3H(いつ・どこで・だれが・何を・なぜ・どのように・どれくらい・いくらで)を全部埋めなくても、社員数名の会社なら「だれが・何を・週に何回」の3つが書けていれば動き出せます。たとえば「事務の社員が、車検の2か月前のお客さまに、毎週月曜に案内のはがきを出す」「整備の社員が、車を引き渡すときに次の点検の時期を口で伝える」のような形です。行動は3つまでにしておくと、月末の見直しで1つずつ確かめられます。


社長が受け持つ行動は、週に1つだけ予定表に入れる
3つの行動のうち1つは、社長自身が受け持ちます。見積もりや電話で埋まる毎日のなかで、社長にしかできない行動を毎週続けるには、曜日と時刻を先に決めておく必要があります。たとえば「毎週水曜の朝8時から30分、次の車検の時期が近いのに予約がまだのお客さまの一覧から5件を選んで自分で電話をかけ、つながらなかったお客さまには、かけ直す日を一覧に書いておく」と決めて、予定表のその枠を先に押さえておきます。
この予定表の取り方は、抱えている仕事の分け方と組で使います。来月しなくても誰も困らないか、7割の出来で社員が仕上げられるか、自分が決めないと誰も決められないか、の3つの問いで仕事をやめる・任せる・自分でやるに分け、自分でやる仕事のうち期限のないものは、曜日と時刻を決めてお客さまとの約束と同じように扱います。目標のための行動も期限のない仕事なので、週の空きが見つからないときは、先に手放す仕事を1つ決めてから枠を取ります。詳しい手順は経営者の優先順位にまとめました。
30分も取れない週があっても大丈夫です。その週は5件を3件に減らして、行動の形だけを切らさずにおけば、次の週にはもとに戻しやすくなります。
年明けに社員へ伝え、月に1回だけ見直す


1行と数字1つ、月の数字、3つまでの行動が決まったら、A4の紙1枚にまとめて、仕事始めの朝に社員へ伝えます。社員5人なら、朝礼の5分で「今年はこういう工場でいたい」「そのために車検を月平均36台にする」「そのために、だれが何を毎週するか」を順に話し、紙は休憩室の壁に貼っておきます。毎月の終わりに、その月の台数を紙の横に書き足していくと、社員も届いているかどうかを自分の目で確かめられます。
見直しは月に1回、月末の30分にします。数字に届かなかった月は、まず先に決めた行動が実際に回ったかを確かめ、はがきが毎週出ていなかったのなら、行動を回すことから立て直します。行動は回っていたのに台数が届かなかったのなら、はがきに電話を足す、案内を出す時期を早めるなど、行動のほうを替えます。
案内を替えた効果は、次の車検の時期を迎えたお客さまから少しずつ表れるので、案内の件数、予約の件数、実際に預かった台数のどこで思っていたより少なかったかを毎月控えておきます。数字そのものは、行動を替えても3か月続けて届かないときに、その控えを見ながら見直すと決めておくと、1か月ごとの上がり下がりで目標を動かさずに済みます。


数字を決めた理由を、1枚に残しておく
来年の12月に1年を振り返るとき、なぜ36台にしたのかが残っていないと、届いたかどうかは分かっても、次の年の数字をどう決めればいいかが分かりません。判断を1件ごとに1枚に分け、問い、事実、考え、次の一歩の4つを書き、決めた日に結論と理由と見直す日を足しておく書き方が、ここでも使えます。目標の数字も1件の判断として、「来年の車検は月何台にするか」を問いにした1枚を作り、今年の月ごとの台数を事実の欄に、36台にした理由を最後の1行に残しておきます。1枚の書き方と週1回の見返し方の例は経営者のノート術にあります。
数字に届かない月があっても、目標を数字にしたからこそ見えた差です。差が見えていれば、次の月に何を替えるかを社員と一緒に話せます。
今夜、来年の数字を1つだけ紙に書く


経営者の目標設定は、どんな会社でいたいかの1行と月末に確かめられる数字1つを決め、その数字を月の数字と「だれが・何を・週に何回」の行動に割り、年明けに社員へ伝えて月に1回見直すという流れです。今夜は、手元の紙に直近10か月ほどの実績を月ごとに書き出し、来年の数字の候補を1つ書いて、その横に来週から自分が受け持つ行動を1つ、曜日と時刻をつけて書くところまで進めてみてください。
数字の候補がいくつも浮かんで1つに絞れないときや、決めた行動が2か月目に止まってしまうときは、人に話しながら考えると整理しやすくなります。当社の経営者向けコーチングは、1回50分・月2回のオンラインのセッションで、質問と対話を通じて頭の中にあるものを言葉にし、優先順位を決めて、次の一歩を実際に動ける形にするところまでご一緒します。体験セッションは50分・5,000円(税込)で、続けるかどうかは体験のあとに決めていただけます。
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