中小企業の生成AIガイドライン|最初の1枚に書くこと

生成AIの社内ルール、最初は紙1枚に、5つ書いて配る

現場から事務所に戻った夜、パソコンで「生成AI ガイドライン 中小企業」と調べている。枚方で社員8人のリフォーム会社を営んでいて、今週、事務の社員が見積もりのお礼のメールをChatGPTで書いていること、現場の若い社員がお客さまへのLINEの返事を頼んでいることを、雑談の中で知った。便利なら使ってほしいと思う一方で、お客さまの名前や住所まで入れていないか、会社として何も決めていないことが気になっている。

社員が10人に満たない会社の生成AIのガイドラインは、何十ページもあるひな形を埋めるより先に、朝礼の10分で読み合わせられる紙1枚から始めると、来週には配れて、困りごとを早めに防ぎやすくなります。この記事では、書く前に社員へ聞く3つのこと、最初の1枚に書く5つの項目、朝礼で配ってから1か月後に見直すまでの進め方を、リフォーム会社の例で順に書きます。

この記事は、事業者の方のAI活用の相談と、社内の3〜10名で受けていただくAIの研修を行い、2026年9月には北大阪商工会議所のセミナー「Canva×AIでインスタ運用ハック」で講師を務めた株式会社GORAQUEが書いています。

社員が自分から使い始めているのは、仕事を楽にしたいと考えてくれている証拠です。その気持ちを止めずに、会社として気をつけるところだけを先に決めておきましょう。

目次

中小企業の生成AIガイドラインは、紙1枚から始める

中小企業の生成AIガイドラインは、紙1枚から始める

東京商工会議所の「中小企業のための『生成AI』活用入門ガイド」は、生成AIを会社全体で使うには、気をつける点を経営者と従業員の全員が分かったうえで使うことが大事だとして、会社としての考え方や注意することを示す「社内利用ガイドライン」を作り、社内で共有するようにすすめています。同じガイドでは、日本ディープラーニング協会がガイドラインのひな形を作って無料で公開していることも紹介されています(東京商工会議所「中小企業のための『生成AI』活用入門ガイド」)。

ひな形は、決めておくべきことを漏れなく並べてあるぶん、社員8人の会社でそのまま配ると、現場に出ている社員が最後まで読むのは難しくなります。最初はA4の紙1枚に、いま社員がしている使い方に関わることだけを書いて配り、足りないところはひな形を見ながら、あとから書き足していく順番のほうが、決まりがふだんの仕事の中で思い出してもらいやすくなります。

書く前に、社員がいま何に使っているかを聞く

紙1枚に何を書くかは、社長が想像で決めるより、社員がいまどう使っているかを聞いてから決めたほうが、現場に合った決まりになります。朝礼の5分を使って、使っているAIとアカウント、頼んでいる仕事、これまでに入れたことのある情報の3つを、名前を書かずに紙に書いてもらうと、だれが何をしたかを気にせずに正直な答えが集まりやすくなります。

生成AIの決まりを書く前に社員に聞く3つ。使っているAIとアカウント、頼んでいる仕事、入れたことのある情報。答えた人を責めないと先に言ってから聞く
図1:書く前に、社員に3つだけ聞く

聞く前には、「答えた内容で叱ることはしない。会社の決まりを作るために聞いている」と一言伝えておきます。お客さまの名前を入れたことがあると書いた社員がいても、その人を責めずに、答えは「入れない情報」の欄に何を書くかの材料として使います。すでにお客さまの情報を入れたことがある人には、あとで社長に個別に声をかけてもらい、どのAIにどんな情報を入れたかを一緒に確かめて、そのあとの対応を決めます。

聞いてみると、社長が思っていたより便利な使い方をしている社員が見つかることもあります。そういう使い方は、あとで全員に広める候補として控えておきましょう。

最初の1枚に書く5つのこと

最初の1枚に書く5つのこと

社員から聞いた答えがそろったら、紙1枚に5つの項目を書きます。使ってよいAIとアカウント、入れない情報、人が読んでから出すもの、迷ったときに言う相手、見直す日の5つで、それぞれ2〜3行に収めると、A4の紙1枚に入り、朝礼で読み合わせても10分ほどで終わる長さになります。

生成AIの社内の決まりとして最初の1枚に書く5つ。使ってよいAIとアカウント、入れない情報、人が読んでから出すもの、迷ったときに言う相手、見直す日。迷ったら入れない、外に出す前に人が読む
図2:最初の1枚に書く5つ

1. 使ってよいAIとアカウント

仕事で使うAIの名前と、どのアカウントで使うかを書きます。社員がそれぞれ別のAIを個人のアカウントで使っていると、どこに何を入れたかを会社で確かめられないので、まずは「仕事で使うのはChatGPT」のように1つに決め、会社のメールアドレスで作ったアカウントを使う、と書いておくと、だれがどのアカウントで使っているかを会社で分かるようにしておけます。東京商工会議所のガイド(2025年8月の第7版)には、ChatGPTの設定で「すべての人のためにモデルを改善する」をオフにする手順が載っていますが、オフにしたあとでも念のため個人情報や機密情報は入れないようすすめているので、設定を変えることと次の「入れない情報」は、両方を書いておきます。設定の項目名は変わることがあるので、配る前に自分の画面で一度確かめます。

2. 入れない情報

このガイドでは、氏名や連絡先、住所のような個人情報と、パスワード、会社のお金の情報、顧客情報などの機密情報を入れないよう書かれています。リフォーム会社なら、お客さまの名前・住所・電話番号、取引先から預かった図面や資料、パスワード、会社の売上や利益の数字、の4つを紙に並べておくと、社員が自分の仕事に当てはめて考えやすくなります。

個人情報保護委員会は2023年6月2日の注意喚起で、事業者が個人情報を含む指示をAIに入れる場合には、その個人情報の利用目的に必要な範囲かを十分に確かめること、本人の同意なく個人データを入れるときは、そのサービスを提供する事業者が機械学習に使わないことなどを十分に確かめることを求めています(個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」)。社員一人ひとりがその場でここまで確かめるのは難しいので、紙には「お客さまの名前は『お客さま』に、住所は『枚方市内』のように地域だけに置き換え、電話番号やメールアドレス、文の最後の署名は消してから貼る。図面や預かった資料は貼らない。消してよいか迷ったら貼らずに相談する」と、だれでも同じようにできる手順で書いておきます。問い合わせへの返信を頼むときの消し方と、送る前に読み直す3か所は、ChatGPTで問い合わせに返信する|下書きから自動化までの3段階に例を載せています。

3. 人が読んでから出すもの

AIの答えは確かな内容とは限らないので、東京商工会議所のガイドは、生成されたものをそのまま信じずに、確かな情報源で事実を確かめるよう書いています。紙には、お客さまや取引先に出す文章、見積もりの金額や工事の日付と工期、ホームページやチラシに載せる文の3つは、AIが作った下書きを社員が読み直してから出す、と書きます。読み直すときは、金額は社内で出した見積書と、日付や工期は工程表と並べて照らし合わせる、と照らす相手まで書いておくと、文章が自然かどうかだけを見て終わらずに済みます。チラシや広告にAIが作った絵やキャッチコピーを使うときは、ほかの作品や登録された商標に似ていないかを調べるようにも書かれているので、広告に使うものは社長が見てから出す、と1行足しておくと迷いません。

4. 迷ったときに言う相手

入れてよいか迷ったとき、入れてはいけない情報をうっかり入れてしまったときに、だれに言えばよいかを名前で書きます。社員8人の会社なら社長か事務の担当の1人に決め、「言ってくれた人を責めない。一緒にどうするかを決める」と同じ欄に書いておくと、うっかりが起きたときに社員が言い出しやすくなります。

5. 見直す日

紙の右下に、配った日と、見直す日を書きます。見直す日は配ってから1か月後の朝礼に置くと、そのあいだに社員が迷った場面がいくつかたまり、何を足せばよいかが見えてきます。AIの機能や各社の決まりは変わっていくので、この紙も一度作って終わりにせず、日付を入れて新しくしていくものとして扱います。

5つの項目の下には「迷ったら入れない。外に出す前に人が読む」と2行だけ書いておきましょう。紙を見返せない現場でも、この2行を覚えておけば、迷ったときの手がかりになります。

朝礼で配ったら、1か月後に見直す

朝礼で配ったら、1か月後に見直す

書き上がったら、朝礼で配って読み合わせます。5つの項目を社長が読み上げ、項目ごとに「こういうときはどうする?」と1つずつ例を出すと、現場の社員にも自分の仕事のどこに当てはまるかが伝わります。リフォーム会社なら、「施主さんへのLINEの返事を頼むとき、名前と住所はどうするか」「チラシのキャッチコピーを考えてもらったら、だれに見せるか」のように、ふだんの仕事に出てくる場面で聞くと、社員も答えやすくなります。

生成AIの社内の決まりを紙1枚で始めて直していく4つの段。社員に聞く、紙1枚にまとめる、朝礼で配って読み合わせる、1か月後に迷った場面を書き足す
図3:紙1枚は、配ってから直していく

配ってからの1か月は、社員が迷ったことや、言う相手に知らせたことを、社長が手帳やスマホのメモに1行ずつ書いておきます。1か月後の朝礼では、そのメモを見ながら、迷う人が多かった場面を書き足し、分かりにくかった言い回しを直して、日付を新しくして配り直します。入れない情報と人が読んでから出すものの2つは、迷いが出なかった月でも消さずに残します。見直しのときには、東京商工会議所のガイドが紹介している日本ディープラーニング協会のひな形も開いて、自分の会社の仕事に関わる項目が抜けていないかを照らしておくと、書き足す候補が見つかります。

見直しの朝礼では、全員でAIに任せてみる仕事も1つ決めておくと、決まりを守りながら使う練習になります。最初に任せる1つは、毎週くり返している、文章や言葉で仕上がる、出す前に自分で読んで直せる、の3つの条件がそろった仕事から選ぶと失敗しにくく、リフォーム会社なら見積もりを出したあとのお礼のメールがその候補になります。条件ごとの選び方と、1週間後に続けるかを決めるまでの進め方は、AIは何から始める?|仕事で最初に任せる1つの選び方に書きました。

社員それぞれの使い方を、決まりと一緒に研修でそろえたいときは、当社のAI実務研修があります。社内の3〜10名で受けていただき、受講者全員が自分の業務でAIを動かすところまでを研修の中で行います。2回コースでは、2回目に職場で使った結果を持ち寄り、社内の情報をどこまで入れてよいかや、頼み方のひな形といった社内の使い方のそろえ方まで扱います。

来週の朝礼に、紙1枚を持っていく

来週の朝礼に、紙1枚を持っていく

今週のうちに、朝礼で社員に3つの問いを聞く日を決め、集まった答えを見ながら、5つの項目を2〜3行ずつ書いてA4の紙1枚にまとめます。来週の朝礼で配って読み合わせ、紙の右下に見直す日を書き入れたら、最初の1枚はそれで仕上がりです。

最初の1枚は、うまく書けていなくて大丈夫です。1か月使ってみて社員が迷ったところが、次に書き足すことを教えてくれます。

自分の会社の仕事のどこでAIを使ってよいかを、一度人と一緒に整理してから決まりを書きたいときは、AIスポット相談が使えます。オンラインか対面の60分で、社員がしている作業を書き出しながら、AIに任せるものと手で続けたほうが早いものを分け、何から始めるかを一緒に決めます。相談のあとには、何をAIに任せるか、次に何から始めるかをまとめたメモをお渡しします。対面で伺える地域と交通費は、スポット相談のページに載せています。

社員のAIの使い方を
どう決めるか、
60分で一緒に考えませんか

AIに詳しくなくても構いません。いま社員の方がどんなふうにAIを使っているかを伺うところから始めます。当日は、ふだんお使いのパソコンかスマホがあれば、頼み方をその場で一緒に試せます。無理な営業はいたしません。

1回60分・11,000円(税込)・オンラインか対面

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この記事を書いた人

山崎 嘉久のアバター 山崎 嘉久 株式会社GORAQUE 代表取締役

株式会社GORAQUE 代表取締役。SNS運用顧問・SNS運用代行、LINE公式アカウント・UTAGE構築、デザイン制作を通じて、個人事業主と小さな会社の集客を支援しています。商工会議所や自治体の協議会で、SNS運用とデザイン制作をテーマに登壇。大阪府枚方市を拠点に活動しています。

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