経営者のノート術|決めた理由を1件1枚で残し、週1回見返す

経営者のノート術。決めた理由を残し、1件1枚で見返す

たとえば、社員7人の水道設備の会社の社長が、水曜の昼休みに現場の近くに停めた車の中で手帳をめくり、去年の春のページに「土曜→やめる?」という走り書きを見つけたとします。来年4月から土曜の受付をやめるかどうかをいままた考えているのに、去年なぜ続けることにしたのかは、どこにも書いてありません。手帳には予定とメモが日付の順に並んでいるだけなので、電話の合間に書いた言葉を読み返しても、当時の自分が何を見て判断したのかまでは思い出せず、同じことを最初から考え直すことになりそうです。

経営者のノート術で役に立つのは、判断を1件ごとに分けて、決めた理由と見直す日まで残しておくことです。この記事では、1件を1枚に分ける理由、1枚に書く4つの項目、週に1回15分で見返す手順を、土曜の受付の例で順に書きます。読み終えるころには、いま迷っている1件を、手元のノートに1枚書き始められるはずです。

この記事は、一人で判断を抱えている経営者の方と1回50分のオンラインのコーチングで考えを整理し、考えを紙1枚にまとめる方眼ノートの講座も開いている会社が書いています。

迷っている1件が出てきた日に書き始め、材料が増えた日や決めた日に書き足して、週に1回見返す使い方なので、毎日の記録が続かなかった方でも始めやすいと思います。

目次

経営者のノート術は、判断を1件1枚に分けるところから

経営者のノート術は、判断を1件1枚に分けるところから

手帳やスマホのメモは、予定や思いついたことを日付の順に受け止めるのに向いています。ただ、ひとつの判断の材料が3月の走り書きと6月の打ち合わせのメモに分かれて入っていると、半年後に「あのときなぜ決めたのか」を探すには何十ページもめくることになり、忙しい週にはなかなか手が伸びません。そこで、予定を書く手帳とは別にノートを1冊用意して、判断が要ることが出てきたら1件につき1枚を割り当てます。新しい材料が出てきたら、その日の空いたページに書くのをやめて、その1件のページに書き足していきます。

日付順のメモと1件1枚の比較。日付順のメモでは3月と6月の材料が分かれ、1件1枚では土曜の受付の1枚に材料と決めた理由が集まる
図1:新しい材料は、その1件のページに書き足す

「経営者 ノート」と調べると、ファーストリテイリングの柳井正さんの『経営者になるためのノート』も目に入ると思います。ユニクロの全店長に配布されてきたノートが2015年にPHP研究所から出版されたもので、作成を手伝った経営学者の楠木建さんは「本文を読むだけでは、このノートの価値の10%も享受することはできない」と語っています(PRESIDENT Online)。読むだけで終わらせず、書いて自分の仕事に使うという考え方は、この記事の1枚にも通じます。

紙かスマホかは、現場で開ける形で選ぶ

紙にするかスマホにするかで迷ったら、まず仕事の合間にすぐ開ける形かどうかを見ます。作業着のポケットや車の中で紙のノートを開きにくいなら、スマホでも構いません。スマホで書くなら、1件につきメモを1つ作り、題名を問いの1行にして、事実、考え、次の一歩を見出しで分けます。

参考として、東京大学などの研究チームが2021年に発表した実験があります(東京大学の発表)。大学生48人が紙の手帳、タブレット、スマートフォンのいずれかに予定を書き留め、あとで内容を思い出すもので、紙の手帳の組は書き留める時間が短く、思い出すときに記憶や言語に関わる脳の部位の活動が高かったと論文で報告されています。全体の成績には差が見られず、学生を対象にした実験なので、経営者のノートの効き目を示すものとは言えません。それでも迷うなら、紙の1冊から始めて、外で見返したいページだけスマホで撮っておくと、両方の使いやすさを取り入れられます。

1枚には、問いと事実と考えと次の一歩を書く

1枚には、問いと事実と考えと次の一歩を書く

1枚の右上に今日の日付を書き、その下に問い、事実、考え、次の一歩の4つを順に書いていきます。書き出す前に欄を線で分けておくと、電話で手が止まっても途中から続けやすくなります。ここからは「来年4月から土曜の受付をやめるか」という例で、それぞれの書き方を見ていきます。数字はどれも説明のための例です。

問いは、答えられる形の1行にする

「土曜のこと」のような題名だと、あとで開いたときに何を決めようとしていたのかが分かりません。「来年4月から土曜の受付をやめるか」のように、やめる、続けると答えられる1行にしておくと、この1枚で決めることがはっきりします。

1行にまとまらず、採用や売上の不安まで一緒に出てくるときは、先に経営者に相談相手がいないのは普通ですの手順で頭の中を外へ出します。気になることを全部書き出し、自分でコントロールできるものに〇を付け、〇だけを期限の近い順に並べて、いちばん上の1つに次の動作を1行書く流れです。そこで残った1つが、この1枚の問いになります。

事実と考えは、欄を分けて書く

事実の欄には「土曜の問い合わせは先月8件」「当番は社員2人の交代」のように、人に見せても同じ意味で通じることを書きます。考えの欄には「平日に折り返せば足りそう」「お客さまが離れないか心配」のように、いまの自分の見立てや気持ちを書きます。この2つが混ざると、半年後に読み返したときに、確かめた話と思い込みの見分けがつかなくなります。欄を分けておけば、事実のどこが変わったから考えも変わったのか、という筋道をたどれます。

1枚に書く4つの項目。問いは来年4月から土曜の受付をやめるか、事実は土曜の問い合わせが先月8件で当番は社員2人の交代、考えは平日に折り返せば足りそう、次の一歩は金曜までに2人に負担を聞く
図2:1枚に書く4つの項目

最後に、だれが、何を、いつまでにを書く

考えがまとまらなくても、1枚の最後には次の一歩を1行だけ書いて閉じます。当社の方眼ノートの講座でも、何を伝えたいのか、どこが論点か、次に何を決めるのかが1枚の上で見えることを大事にしていて、最後は「だれが、何を、いつまでに」まで書き出します。例の1枚なら「自分が、当番の2人に土曜の負担を、金曜までに聞く」です。1枚を見返して、この3つのどれかが言えないときは、そこがまだ書き足りていないところだと分かります。

字がきれいである必要も、欄が全部埋まる必要もありません。空いた欄があれば、そこが次に調べることの目印になります。

決めたら、理由を1行と見直す日を足す

決めた日には、同じ1枚の下に「4月からやめる。土曜の8件のうち6件は週明けの折り返しで足りる内容だった。6月末に見直す」のように、結論と理由と見直す日を足します。去年の走り書きに足りなかったのは、この1行です。

なかなか決められないときは、決めるための材料、何を優先するかの物差し、うまくいかなかったときの引き返し方のどれが足りないのかを確かめ、足りないものごとに来週やることを1つ決めます。値上げの例で順に書いた手順は決断できない経営者へにあります。

週に1回、15分だけ開いて3つを見る

週に1回、15分だけ開いて3つを見る

書いたまま閉じると、ノートは日付順のメモと同じように眠ってしまうので、見返す時間を週に1回15分だけ取ります。「金曜の夕方、現場から戻ったら」のように曜日と場面を決めて、ほかの予定より先に手帳へ入れておくと続けやすくなります。

予定の取り方は経営者の優先順位でも書いていて、期限のない仕事ほど、空いたらやろうと思っているうちは見積もりや電話で時間が埋まるので、曜日と時刻を先に決めてお客さまとの約束と同じように扱います。見返す15分も、この扱いにしておきます。

開いたら、まず次の一歩が動いたかを見て、動いていない1枚には、もっと小さい一歩を書き直します。次に、見直す日が来た1枚を開いて結果を書き足します。見直す日を決めたときに手帳のその日付へ「土曜の受付の1枚を見直す」と書いておくと、全部をめくらずに済みます。最後に、当時の見立てと結果がどこでずれたかを1行書いておくと、「自分はお客さまの離れ方を重く見積もりやすい」のような読みの癖が、何枚か重なるうちに見えてくることがあります。

週に1回15分で見る3つ。次の一歩は動いたか、見直す日が来た1枚はあるか、見立てと結果はどこがずれたか
図3:週に1回、15分で3つを見る

1枚は、人に話すときの材料にもなる

一人で見返しても同じところを回るときは、その1枚を持って人に話します。税理士や同業の知人に会うときに、今日決めたいことの1行と、数字や期限や選択肢を書いたメモ1枚があると、最初の説明に時間を取られにくくなります。1枚の問いと事実の欄が、そのままこの2つの役目を果たします。会う時間の割り振りや持ち帰るものは経営者の壁打ちにまとめました。

社員の事情やお金の話を書いたノートは、人の目に触れない場所にしまい、社員の名前は頭文字で書いておきます。

見立てが外れた1枚は、失敗の記録として残すものとは考えていません。次の判断で、どこを確かめればいいかを教えてくれる1枚です。

今夜、迷っている1件で1枚書いてみる

今夜、迷っている1件で1枚書いてみる

経営者のノート術は、判断を1件1枚に分け、問い、事実、考え、次の一歩を書き、決めたら理由と見直す日を足して、週に1回15分で見返すという流れです。特別なノートでなくていいので、今夜、手帳とは別の手元の1冊に、いま迷っている1件を問いの形で1行書き、事実を2つと、期限の日付を入れた次の一歩を1つ書くところから始めてみてください。

ここで書いた4つの項目は、今夜から一人で試せるように簡単にしたもので、方眼ノートの書き方そのものとは別のものです。考えを1枚に整理する型を実際に書きながら身につけたい方には、Zoomで1日6時間の方眼ノート1Dayベーシック講座もあります。一人で書いていて同じところで止まるときは、当社の経営者向けコーチングで、質問と対話を通じて頭の中にあるものを言葉にし、次の一歩を実際に動ける形にするところまでご一緒します。体験セッションは50分・5,000円(税込)で、続けるかどうかは体験のあとに決めていただけます。

考えの整理を、50分の体験から試してみませんか

体験セッションは、進め方のご説明と体験をあわせた50分です。進め方が合うかどうかを確かめてから、続けるかどうかを決めていただけます。

1回50分・オンライン。体験は5,000円(税込)です。

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この記事を書いた人

山崎 嘉久のアバター 山崎 嘉久 株式会社GORAQUE 代表取締役

株式会社GORAQUE 代表取締役。SNS運用顧問・SNS運用代行、LINE公式アカウント・UTAGE構築、デザイン制作を通じて、個人事業主と小さな会社の集客を支援しています。商工会議所や自治体の協議会で、SNS運用とデザイン制作をテーマに登壇。大阪府枚方市を拠点に活動しています。

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